一章

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「居たよ。悪い?今日は私たちが付き合いだして一年目の記念日だから、プレゼントを買いに行ったの。でも買うの止めた。彼女の親友と浮気するような人にあげる物なんて何も無いもの」 「信じらんない……」ミサはまた呟くように漏らした。  なるほど、そういう事だったのか。合点がいった。安堵から自然と笑みが溢れた。 「また笑ってる。何がそんなに可笑しいのよっ」 「そりゃ可笑しいさ。だってミサは勘違いしてるんだから」  僕の言っている意味が解らないらしく、ミサは眉間に皺を寄せて、小首を傾げた。 「デパートに行ったのはこれを買う為だったんだ」  僕は鞄から黒い長方形の小箱を取り出し、開けて見せた。  ミサが「わぁ」と、口から空気が漏れたような声を出した。目を丸くして驚いている。誤解はあったがミサの反応は上々だ。僕はほくそ笑んだ。  箱の中には小さなハートの付いたネックレスが入っていた。僕はそれをミサの首に着けてあげた。うん、やっぱり似合う。 「プレゼント何がいいか分からなくてさ、ミサをよく知るトモちゃんに選ぶのを手伝ってもらったって訳さ」
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