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タツオは指令機のなかで息を殺して続報を待った。ジョージの声は弾んでいる。
「2度目のロックオン成功。一機がヘリパッドに帰投していく。残り二機もさらに遠くへ避難した。作戦成功だ。ぼくもみんなのところに帰るよ」
そのとき機銃弾を連射する音がうなりをあげた。ジョージの悲鳴が耳元で炸裂した。
「戦闘不能。抗12型ダウン。残念だ。タツオ、動けなくなった」
タツオはコックピットの操作盤わきを叩いて叫んだ。
「くそっ、ジョージが落ちたのか」
チームのメンバーからも不安に満ちた声が届く。
「ジョージ、だいじょうぶ」
「あいつが最初に落ちたのか」
「10発もくらいやがって」
だが、まあいいだろう。これでジョージはすくなくとも鬼門だった第8回の戦闘訓練を無事に終えたことになる。勝敗などタツオにとっては、どうでもいいことだった。しかし、つぎの警報が安堵したタツオの胸を心臓の奥まで凍らせることになる。
「火災発生。戦闘中森林火災発生。各自、戦闘を中断して退避せよ」
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