第1章 出会い

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足を進めて角を曲がった時、目の前に現れた姿に足を止める。 トイレの出口の壁にもたれかかって立っているその人は、ゆっくりと視線を上げて私を見つめた。 「駆――さん」 腕を組んで立っていた彼は名前を呼んだ私をじっと見つめる。 その何か言いたそうな表情を見て、見られていたかな、と思う。 「いつもあんな事してんの?」 あんな事――。 あぁやっぱり見られていたか。 「悪趣味ですよ。覗き見なんて」 「別に好きで覗いたわけじゃない」 「それを言う為に、わざわざ待っていたんですか」 私の言葉を聞いて、小さく溜息を吐いた彼はそっと壁から背中を離した。 そして、そのままスタスタと私の方に歩み寄ってくる。 「もっと自分大切にしろよ」 私の隣で足を止めたと思ったら、小さな声でそう言った彼。 そして、そのまま何も無かったかのように自分の席へと帰っていった。
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