出張

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「松本さん」 「なんでしょう」 「急で申し訳ないが、来週から櫻井くんと一緒に名古屋に出張に行ってくれるか」 はい!? っと文句が口から飛び出しそうなのを、グッと堪えた。 愛嬌のある親しみやすい部長だが一応上司だ。 「じゃ、頼んだよ」 「ちょ、部長っ!」 私の返事を聞く前に、部長はニコニコしながら逃げていった。 手元には、部長が置いていった出張の概要が書かれた紙。 まぁ出張といっても勉強会だ。 新しい商品知識や医療に関する知識をみっちりと勉強する。 医療は日々進化しており、それと同時に医療機器も進化する。 だから私達はどれだけキャリアを積んでも、毎日が勉強だ。 取引先に行って説明できないんじゃ話にならない。 手渡された紙を見ながら、小さく溜息を吐く。 仕事に関する事だから、私情を挟む事はできない。 そう自分に言い聞かせて、何度目かの溜息を吐いた。
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