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それでも、直ぐに我に返って瞬きを繰り返す。
よくよく考えれば、この言い草って――。
そんな事を思いながら、ジリジリと追い込んでくる櫻井さんを、じっと私も見つめ返す。
そして。
「櫻井さん」
「何」
「前から思ってたんですけど」
完全無欠の私の上司。
どんな時も冷静沈着で、仕事にも行動にも一切無駄がなく、出来ない事などない。
『NO』とは決して言わない、我が社の次期社長。
そんな彼だけど――。
「もしかして...…ヤキモチ妬いてます?」
こんな事、思っていいんだろうか。
あの櫻井さんが、私にヤキモチを妬いているなんて。
私の言葉に、全く表情を崩さずこちらを見つめ続ける櫻井さん。
なかなか言葉を発さない彼を、じっと待つ私。
すると。
「悪い?」
真顔でそう言った櫻井さんは、どこまでも大人で。
でも、垣間見えた表情は、なんだか可愛かった。
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