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久しぶりのプライベートでのこういう時間。
まるで付き合う前みたい。
そんな事を思いながら隣を盗み見ていると、慣れた手つきで煙草に火を点けた櫻井さん。
気怠そうに煙を空に吐き出して、大きく溜息を吐いた。
仕事場では見られない、なんとも気の抜けたその姿。
私にだけ見せてくれると思うと、嬉しくて頬が上がる。
「櫻井さん」
「ん~」
「私にも一本下さい」
あんまり美味しそうに吸うもんだから、なんだか久しぶりに吸いたくなった。
ベランダ越しに手を出して煙草を貰おうとする。
そんな私を、くわえ煙草のまま、チラッと見た櫻井さん。
そして、再び真っ暗な空に白い雲を作ってから。
「ダメ」
そう言って、意地悪そうに笑った。
「え、なんで」
「体に悪いから」
「自分はヘビースモーカーじゃないですか」
「俺はいいんだ」
「それ理由になってませんよ」
納得のいかない言葉で捻じ伏せられ、ムッとする。
そんな私を見て、櫻井さんは吸っていた煙草をもみ消した。
なんだかその姿に少しムッとして、意地悪心に火が点いて口を開いた。
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