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そんな意味を込めて、その言葉を落とすと、櫻井さんは大きく背伸びをしてから、手すりに体を預けてこちらに視線を向けた。
そして、不敵に笑って口を開いた。
「俺は別にいい」
「え?」
「俺はたった一人でいいんだよ」
「一人?」
「たった一人、心から信頼できるヤツがいれば」
そう言って、真っ直ぐに私を見つめる、その瞳。
その真っ直ぐな眼差しに、何も言えずに見つめ返す。
すると。
「そういった奴と、一生一緒にいるんだろうな」
「え、どういう意味?」
その言葉の意味が分からなくて、思わず聞き返す。
すると、櫻井さんは悪戯っ子のような顔でクスクスと笑った。
そして。
「俺は、もうそいつを見つけたけどな」
「見つけたって? 誰?」
「俺は、もう恋愛はしないつもり」
「しないって...…え?」
なんだかストレートなのか、遠回しなのか分からない。
その言葉の意味が全く分からない。
相変わらず首を傾げ続ける私に、再び煙草に火を点けた櫻井さんが不敵に笑ってこちらに視線を向けた。
「だから、俺はこの恋愛で最後にするつもり」
「――」
「お前で最後」
真面目な顔して、ごく普通の会話でもするかのように囁かれた言葉。
だけど、ようやくその言葉の意味を理解した瞬間、一気に頭の中がフリーズする。
それでも、すぐに体が反応して顔が真っ赤になった。
そんな私に追い打ちをかけるように、櫻井さんはニヤリと笑って口を開いた。
「俺は、お前とずっといるつもり」
そう言って、何も無かったかのように煙草をくわえて、再びふーっと空にむけて吐き出した。
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