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第11章 ダブルバインド
「…眞名実」
ごんごん鳴る古い洗濯機。その前にぼうっと佇んでいたわたしは背後から呼びかけられた声に不自然に跳ね上がりそうになって慌てて自分を抑えた。まずい。
「なっ何?…わたし、なんか忘れてる?」
身を翻して台所に向かおうとした。けど、間近で不審げにわたしの様子を伺ってたと思しきリュウの胸におでこをぶち当てそうになる。台所も風呂場も洗面台も洗濯機も、水回りを全部強制的に一箇所に集中することだけを考えて構成されてる古い店舗付き住宅はとにかく狭い。使用感だけで言うと下手すると上林くんの部屋より狭く感じるくらい。
昔はここに十人近い高校生がみっちりごろごろしてたもんだけど。二人きりに慣れちゃうとそれでも距離が近い、と思うことがある。
リュウもわたしの唐突な動きにびびったらしく、大袈裟なくらい後ろに飛び退った。その拍子に脛かなにかを柱にごん、とぶつけたらしく痛ぇ、と小さく呟いて顔をしかめる。
「ごめん」
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