第11章 ダブルバインド

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「いいけど。不審なやつだなお前。洗濯機にスイッチ入れに行ったはいいけど全然こっちに戻ってこないし。様子見に来たらぼうっと宙を見据えてじっと動かないでただ立ってるだけ。…古いけどそれ、一応全自動だぞ。つきっきりで見張ってなくても仕事してくれるはずだけど」 「ああ。…まあ、そこは。この子を信頼してないわけじゃ…。確かに時々ちょっと洗濯物が中で偏ったくらいでも止まっちゃうけど」 別に椿原家の家電をディスったつもりではないが。リュウが肩を竦めた。 「止まる時はやかましくブザーが鳴るから。いい加減にしろってくらいの音量だからここにいなくてもわかるよ。てか、お前鍋火にかけっ放しだけど平気なの。弱めてもいなかったじゃん」 「う、そうか。やば」 わたしは慌ててリュウの傍をすり抜け台所へ向かおうとした。彼はずさぁ、と身をかわして壁に貼りつきわたしを避けて背中に声をかける。 「もう弱火にしたよ。一回沸騰してたからそれでいいかと思って。火加減までは考えてないから自分で調節しといてよ。中火がよかったらちょっと弱いかも、それじゃ」 「ああ、そう。それでいいよ、ありがとう」 わたしはほっとして改めて鍋を一応確かめた。蓋を開けて中を確認する。大丈夫そう。 さすがリュウ。本当に細かいとこ気がつく。もともと自分で料理はする人だから、こういう判断は何の問題もない。     
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