第11章 ダブルバインド

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一気に喋りまくってふと我に返ったように謝る。気持ちわかる。きっと、昼間のあいだこのごたごたの最中もずっと溜め込んでたんだろうな。わたしは共感を込めて励ました。 「気にしないで。それはストレスたまるよね。お客さんとのやり取りは仕方ないけど。自分とこの社内の相手との間で無駄に消耗しなきゃいけないっていうのがさ。なんでこんなことで、って思うもんわたしだって」 彼は安心したように不満を吐き出した。 『そうなんだよ。俺もお客さんの方の言い分は無理ないなって思うんだけどさ。最後はとにかく冷静になって折り合いをつけてもくれたし、ちゃんとこっちが誠意を持って謝れば。でも、それを何で俺がすんの?それってお前の仕事だろ?と思っちゃうわけだよ、その営業の奴に対して』 「だよねぇ…」 つい唸る。自分の仕事についてのあれこれの記憶が思わず脳裏にちらちらと。 『お前がそんな風に不貞腐れてないでちゃんと交渉を全うしてくれたら俺もその分だけ早く自分の仕事に取り掛かれるのにな、とかさ。何がって、今後もあんな奴と組んで仕事することになんのかと思ったらさ。実際憂鬱になるよな』 「うん。…でも上林くんてやっぱ偉いよ、さすがだよね」 思わず素直に感嘆する。向こうはそんなこと言われると思ってなかったみたいで面食らったように呟く。 『へ?何が?』     
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