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「ただいま~」
あくまでも小声。聞こえるかどうか、ってくらい。
「おかえり」
と奥から声が響いてきた。それに続いて、もう一声。
「オカエリ、ユイチ」
妙なアクセントの付いた、カタカナ言葉。僕はユイチじゃない、悠一だ。そう反論した。
リビングのドアをあけると、二人がいた。
「なんでいるの?」
「だって、塾生だもの」
そうか。最初に会ったのも、塾に入るというあいさつだったし。
「英語教えるの?」
「まさか~」
母は伸びをして、僕の方にテキストを見せた。
「ニホンゴ、ベンキョ」
代わりにアリスが答えていた。
僕は足早に部屋を出た。自分の部屋へと向かう。
まさか…まさか、まさか! ここまでもあいつに侵されるなんて思ってもみなかった。あいつはなんだ? 宇宙人か? ここを征服しに来たのか? それともこれは僕への嫌がらせか? …僕は、一体何なんだ?
「ニホンゴ、ベンキョ」
ぎこちない日本語が耳から離れなかった。
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