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そもそものことの起りは、あいつが越してきてからで。僕と同い年で、たまたま僕の母が開いている塾生なだけで。直接的に僕にかかわりはなかったから、それまであんまり気になることはなかった。
あれは何の時間だったかな。
「男女1人ずつ、自由にペアつくってー」
と、先生が迷惑な号令をかける。この年頃の子にかける言葉ではないだろう。少なくとも僕はそう思う。
まあ、そう言われても何ら問題がない生徒もいるわけで、そういう奴らはすぐにペアを作って楽しくおしゃべり。別に羨ましいなんて思っちゃいないけど、そういう人生を歩んでいたらどうだったんだろうと考えてみる。
「おーい、まだ相手いねえの?」
まさしく賢人はそっち側の人間で、もうペアを作っていた。
「別に」
とかわしてみる。いーよなー、お前は。
「須藤さんと組めば? ほら、あそこで一人でいるし」
あれから、アリスは日本語を少し話せるようになった。勉強家なのか、日々話せる言葉の数が増えているような気がする。まだ片言なのは変わりないが、なんとか女子のグループにも入れているようだ。
「いや、俺はいーよ」
「よくはねーだろ」
急に大声を出して手を振った。
「おーい、須藤さーん! こいつが一緒にやろうって」
「おい、そんなこと言ってないって」
と止めに入るも、時すでに遅し。嬉しそうな顔をして、こっちへやってくる。
「ユイチ!」
だから、悠一だって。
「よかったな、ユイチ(・・・)」
賢人が不敵な笑みをみせた。
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