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「食べてさしあげたらいかがです。それですべてを終わりにしましょう。心を解き放つのです」
「そうだな。義経、すまなかった」
頼朝は焼鮭を一口食べると涙目ではあったが少しだけ笑みを浮かべた。気のせいなんかじゃない。大翔もまたニコリとしていた。政子も静も若丸も微笑んでいた。
まさか、本当に笑顔になるとは。
もしかして、頼朝は義経に謝りに来ていただけなのかもしれない。すべてのわだかまりを払拭したかったのかもしれない。
「美味しい?」と大翔がちょっとおどけた感じで問うた。
「ああ、うまいぞ。脅かしてすまなかったな」
頼朝がこんなにも優しい笑みを浮かべるなんて。奇策が成功した。やはり義経の策だったのかもしれない。
「ここは私たちの居場所ではありませんよ。帰りますよ」
頼朝が頷くと政子はスッと寄り添い手を繋いで空へと浮かび上がっていく。ふいに月明かりが二人を照らしたかと思うと溶け込んで姿を消した。
卓史は月を眺めて息を吐く。
「終わったな」
「そうですね」
「万事解決、めでたし、めでたし」
みんなの笑顔に卓史も頬を緩めた。やっぱり笑顔が一番だ。
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