只今、不思議捜査中~東のはずれで犬が鳴く~

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「ねぇ、ぼくも伊達巻食べていい」  姉がニコリとして頷いたと思ったら、大翔は伊達巻にかぶりついていた。可愛い奴だ。やっぱり変なところはない。 「卓史も食べて」  その言葉に伊達巻を箸で割り口へ運ぶ。おお、この味だ。プリンのような滑らかさだけどスイーツではない。何とも言えない味わいだ。寿司屋で作る伊達巻寿司だからな、これは。伊達巻の下に切った巻き寿司がある。海苔は巻いるんじゃなくて中にあって、なんていったらいいのか。桜でんぶと玉子焼きとかんぴょうが入ったカリフォルニアロールみたいな感じだ。ちょっと違うかもしれないが表現するならそんな感じだろうか。やっぱり好きだな、この味。  隣の皿に盛られたカレーボールも一口パクリ。口に入れた瞬間カレー風味が広がっていく。玉ねぎの甘さもあって美味い。 「なあ、姉ちゃん。サルエビのかき揚げも食べたいんだけどさ」 「えっ、そうなの。犬若食堂のサルエビかき揚げのことだったら今日は無理ね」 「無理?」 「お店お休みだもん」  そうなのか、残念。それならば、そのぶん伊達巻寿司を堪能しょう。 「そうだ、電話で話していたことだけど」  卓史の言葉をかぶせてくるようにして姉は「そうそう、それ。早くそれを解決してほしいのよ。絶対にあんたの仕事よ、これは」とひとり頷いていた。
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