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どういうことだ。やっぱり霊的なことなのか。けど、何も感じないけど。首を捻っていると「大翔、今は大翔よね」と姉は大翔に顔を近づけ訊いている。
何をしているのだろう。自分の息子に訊くことか。どう見ても大翔だろう。それとも何か憑き物でもいるのか。うーん、それらしき霊はどこにもいないけど……。たださっき感じたものが気のせいでないとしたら、何かあるのかもしれない。
「どうしたの、ママ」
「よかった、大翔」
安堵の表情をして抱きしめる姉。まさか姉のほうがおかしいのか。じっと姉をみつめたがとくにおかしな気は感じられなかった。姉がおかしいのは前からだったな。そんなこと口が裂けても言えないけど。
「姉ちゃんの気のせいなんじゃないのか。特におかしなところはなさそうだけど」
「そんなことない。絶対に何かある。犬よ、犬。どこかに犬が潜んでいるのよ」
また、わけのわからないことを。
「犬が潜んでいるってなんだよ。野良犬でもいるのか」
「違うわよ。けど、そのうちわかるわ。なんだか外に誰かいるみたいなのよ」
そのうちねぇ。外に誰かって犬ってわけじゃないのか。そうだとしたら、どこからかやってくるのか。この辺に野良犬なんていないはずだ。不審人物がいるなら危険だけど。そういうことじゃないのだろうな、きっと。
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