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「誰かって」
「わからない。突然、窓がガタガタしたり、何か金属が擦り合される音がしたりするのよ。夜中にね。で、大翔が目を瞑ったまま玄関に立っていたこともあったの。耳を塞いで蹲っていることもあったわ。おかしいでしょ。絶対に何かがいるのよ」
なるほど。霊現象と言えなくもない。
けどなぁ。部屋中をグルッと見回して見ても怪しい気配はない。天井の隅あたりにいることもあるが何もいない。家の中じゃないのなら、外にいるのだろうか。神棚の気が悪霊を家に入れさせないということもある。窓から外を右から左へとじっくり観察したが、今は問題なさそうだ。夜中に来るのだろうか。
「まあいいや、今日は泊まっていくから明日までには何かわかるだろう」
「お願いね」
それなら、ちょっと海にでも行こうか。もちろん、泳ぎにではなく眺めに。とっくに海水浴の時期は過ぎた。寒中水泳するなら別だが、そんな趣味はない。
「その辺歩いて来るよ」
「あっ、ぼくも行く」
「大翔も行くか。なら、どこがいい」
「犬岩」
大翔がそう口にした瞬間、姉が「ダメ」と叫んだ。
思わず、ドキッとしてしまった。なんて大声出すのだろう。大翔が泣きそうな顔をしている。
「なんだよ急に。ダメってことはないだろう」
「ダメなのもはダメなの」
姉が睨み付けてきた。卓史は姉の耳元で犬岩に何かあるのかと訊ねた。
「あそこに行ってから大翔がおかしくなったの」
「どこもおかしいようには見えないけど」
「今はね。けど、あそこへ連れて行ったらきっとまた……。行くなら地球の丸く見える丘展望館にしたら」
「そうだな、そのほうがいいのかな」
大翔は間髪入れずに「ぼく、犬岩がいい」と話して袖を引っ張ってきた。
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