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姉の家を出ると坂を下っていく。距離はあるが屏風ヶ浦と海が望めて頬が緩む。ただこの辺は本当に坂道が多い。下り坂はいいが、帰りの上り坂のことを思うと少し憂鬱な気分になる。それでも景色の良さに救われる気がした。
少し気温が上がったのだろうか寒さはそれほど感じない。海風がないせいもあるのかも。食べたあとで体温が上がっているせいってこともあるのかも。
犬岩まで十五分くらいかかるだろうか。屏風ヶ浦まではどれくらいだろう。歩いて行ったことがないからよくわからない。三十分くらいで行けるだろうか。もっとかかるだろうか。
「おじちゃん」
「んっ、どうした」
「なんでもない」
なんだ、変な奴だな。やけに楽しそうだ。そんなに犬岩に行くことが嬉しいのだろうか。
大翔と手を繋いで歩いているとなんとなく自分の子供のような気がしてしまう。まだ二十歳だけど同じ年で結婚している人もいるからな。というか姉がそうだった。
「大翔は今何歳だっけ」
「五歳」
そうか五歳か。
「お母さんのこと好きか」
「うん、だーいすき」
頬を緩ませて「そうか」と呟く。
旦那もいい人だし大翔もいい子だし、姉は幸せ者だな。
「ねぇ、おじちゃん。犬岩行く前に神社に行こうよ」
「神社か」
「うん、行こうよ、行こうよ」
渡海神社のことか。確か通り道にあったな。
「よし、寄っていこう」
「やったー」
神社に行くことにはしゃぐなんて大翔も変わっている。面白いものなんてなさそうなのに。
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