只今、不思議捜査中~東のはずれで犬が鳴く~

15/46
前へ
/46ページ
次へ
 あそこは確か千三百年くらいの歴史ある神社だったはず。それに貴重な森があるって聞いたことがある。極相林と言っただろうか。 「おじちゃん、早く行こう」  大翔が手を引っ張り走ろうとする。本当に元気がいい。大翔から見たら、やっぱりおじちゃんなのだろう。おじちゃんか。だいぶ慣れてはきたが、そう呼ばれるのはやっぱり気になる。なんとも複雑な気持ちだ。お兄さんって訂正するのもどうかとも思うし。ポッコリお腹がおじさん度を増している気がした。ダイエットするべきかと卓史は腹を軽くさする。いや、この腹とおじちゃんと呼ばれることは関係ない。  大翔は繋いだ手を前後に振ってニコニコ顔だ。  大翔の楽しそうな顔を見ていると、おじちゃんでもいいかと思えてくるから不思議だ。  勘弁してほしいけど、我慢するか。そのうち気にならなくなるだろう。  しばらく歩くと右側に森が現れてきた。どこにでもあるような森に見えるけど違うのだろう。森の向こう側が渡海神社だ。鳥居はもう少し先にある。  途中に小さな鳥居が見えて来て大翔が行こうとするが、卓史は「大きい鳥居のところから入ろう」と促した。行くなら正面からのほうがいい。それに小さい鳥居からだと細道だし蜘蛛の巣がありそうでどうにも行く気がしない。蜘蛛は苦手だ。もしも神様の使いだったとしても蜘蛛だけは遠慮したい。  正面の鳥居の前に来るとお辞儀をして潜る。その瞬間、不思議と気持ちがシャキッとする。  ふと森へと目を向けた。正直、そこまで貴重な森だとは思えない。学者だったら興奮して目を輝かせているのかもしれないけど。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加