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「気持ちいいね」
「そうだな」
神社ってどこか清々しい気分になる。不思議だ。
「おじちゃん、早くお参りしよう」と大翔が突然走り出そうとするのを引き止めて手水舎で清めてからだと話す。
「どうするの」と素直に聞き入れて柄杓を手にする。
「まずは柄杓で水を汲んで左手に少し水をかけて、右にかけて」
大翔は頷きながら真似ている。小さな手に水をかけている姿に頬が緩む。
「そしたら、左手に少し水を溜めて口をすすいで」
大翔は水を口に入れて下へ吐き出した。
「そうそう。で、左手をもう一回洗って、最後に柄杓を立てて洗い流して終わりだ」
「やったよ」
「はい、よくできました」と頭を撫でてあげると大翔がニコリとした。
微笑む大翔になんだか癒された。
「おじちゃん、行こう」
「ああ」
大翔に手を引っ張られて拝殿へと歩みを進めたのだが、狛犬のところで大翔が立ち止まる。狛犬を見ているみたいだ。そう思い卓史も狛犬を見遣ると、ギロリと目が動く。突然のことにハッとなり鼓動が早まる。この狛犬には魂が宿っているようだ。神様を見守る眷属なのだろう。
「その子供に左側を歩くように教えなさい」
大翔は真ん中に立っていた。そういうことか。卓史は狛犬に「すみません」と謝り大翔を左側に寄せた。
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