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「ねぇ、おじちゃん。真ん中を歩いちゃダメなの」
「ああ、そうだよ。神様の通り道だからね」
「ふーん、そうなんだ」
大翔はそう呟くと「狛犬さん、ごめんなさい」と頭を下げていた。
「わかればよい。知らなかったのだろう。だから、今回は代償を払わずともよい。だが次同じことをすれば転ばすぞ。いいな」
「はい、わかりました」
大翔が大きな声で返事をすると狛犬の目が垂れ目になり口角も上がっていた。
卓史は狛犬に頭を下げて大翔の手を引き拝殿へと向かう。
なんとはなしに狛犬と会話をしていたが、大翔も狛犬と話していたことに気づき「なあ、大翔。狛犬の声が聞えていたのか」と訊ねた。
「うん、聞えたよ。怖い顔していたのに最後は笑ってくれたもんね。あれって僕が間違ったことしたからでしょ」
卓史は大翔の頭を撫でて「そうだよ」とだけ答えた。
そうか大翔は霊感が強いのか。普通の人には見えないものが見えるのだろう。だから、姉は大翔が変だと思っているのかもしれない。だとしたら、犬岩に何かがいるってことか。霊的なものなのだろうか。悪霊じゃなきゃいいけど。
拝殿では二礼二拍手をして『大翔を見守ってください』とお願いをして一礼をした。願い事が思いつかなかったから甥っ子のことをお願いした。なんとなく神様が微笑んだ気がする。気のせいではないとは思う。流石に神様の姿は見えなかったが、微かに「わかった」との返事をもらえた気がしたし、居たことは間違いないたのだろう。神様は霊格が高いから今の自分では目にすることは叶わなかったのだろう。
自分もまだまだってことだ。
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