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「やはり間違いなさそうですね」
あの大翔なる子供は間違いなく義経様の生まれ変わり。やっと出逢えたと思うと涙が……。今世では幸せになってもらわなくては。それが今の願い。
「そうだろう。おいらの眼力もなかなかのものだろう」
若丸は自分のことばかり。少しは感傷に浸る時間が欲しいというのに。仕方がない、若丸に付き合ってあげましょう。
「そうですね。犬岩に宿っていたおかげですね。たくさんの観光客からパワーをもらったようですから眼力もあがるはずです」
「確かに」
いつの間にか犬の姿から狸の姿に若丸はなって頷いていた。
「神に近づきつつありますよ」
「なら、狐神みたいにおいらも祀ってくれるかな」
「それはどうでしょうね。若丸は源九郎狐のようになりたいのですよね」
若丸は頷き「おいらも稲荷神社の神となりたい。だから善きことをするつもりだ。義経を守れば源九郎狐のようになれるはずだ。そうだろう」と同意を求めてきた。
「なれるかもしれませんね。精進しなさいね。それと義経様とお呼びなさい」
「わかった」との言葉とともに若丸は腹鼓をポコンと叩いた。
相変わらず良い音。源九郎狐の初音の鼓の代わりのもつりかしらね。
満面の笑みの若丸が急に真剣な顔つきになり「それはそうと、あの子大丈夫かな。ショックだったろうな。あの記憶は」と目を合せてきた。
「そうですね。わたくしや常盤御前や義朝の記憶はいいとしても、切腹したときの記憶は辛いでしょうね。悲痛な思いが雪崩のようにこっちまで伝わってきましたから気絶するのも当然です」
「なあ、様子を見に行ったほうがよくないか」
「そうですね。行きましょう」
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