只今、不思議捜査中~東のはずれで犬が鳴く~

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「ただいま」 「おかえりなさい。あっ、何、なにかあったの。大翔、大丈夫なの」 「姉ちゃん、大丈夫だって。ちょっと疲れただけさ」  姉は疑いの眼差しを向けてくる。やっぱりダメか。誤魔化せそうにないかも。そう思った矢先大翔が「ママ、ぼく眠くなっちゃっただけだよ」とニコリとする。 「そうなの。ならお昼寝しようか」  姉も大翔に笑みを返す。  大翔のタイミングのいいフォローに胸を撫で下ろす。姉に気づかれないように大翔に向けて親指を立てる。大翔は一瞬だけニコリと微笑み姉と一緒に二階へと上がっていった。甥っ子にフォローしてもらうなんてなんとも情けない。嘘が顔に出てしまうからしかたがないか。  姉と大翔がいなくなっても階段に目を向けていたらふいに「卓史くん、おかえり」と声をかけられた。姉の旦那の祐介だった。 「あ、どうも。祐介さん、帰っていたんですね」 「ああ、知り合いの漁師さんのところで金目鯛もらってきたから夕食をお楽しみに。煮魚と焼き魚と刺身とたくさん食べてくれよ」  金目鯛づくしとは贅沢だ。それにしても金目鯛をもらえるなんて凄いな。祐介の人柄の良さがそうさせるのかもしれない。  姉はそのあと大翔のこと特に何も訊いてこなかった。大翔の言葉を信じたのだろうか。それとも訊かないほうがいいと思ってのことだろうか。まあ、どっちにしろ、解決させる。静と若丸とともに。 ***
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