13人が本棚に入れています
本棚に追加
その日の夜、皆が寝静まったころ、突然の咆哮に卓史は起こされた。
目を覚ましても聞こえる。夢ではない。もしかして若丸か。あんな声出せるのかあいつ。やっぱりあいつは妖かもしれない。犬に化けられる時点て普通じゃないが。同時に嫌な気配を感じて鳥肌がたつ。外に何者かがいる。不審者じゃないよな。外から何かが焦げたような臭いもする。ということは悪霊のお出ましか。
卓史は徐に布団から抜け出して窓際に進む。
どこだ、どこにいる。
若丸は門柱の横にいた。しきりに吠えている。何者かに威嚇をしているみたいだがその相手が門柱の陰に隠れてしまっている。誰だ、誰が来た。
何かがキラリと光ったかと思うと、若丸の姿が一瞬で消え去ってしまった。月あかりに照らされた光るものは日本刀だった。若丸は斬られたのか。あっさりやられちまったなんてことあるのか。昼間はずいぶん強気な発言していたのに。もしもやられたとなると、相当な力の持ち主かもしれない。
まずい、これは相当まずい状況だ。
焦げ臭さが増していくようだ。ガシャリ、ガシャリと嫌な音とともに門柱の陰から姿を現したのは甲冑を来た武士だ。
「義経、ここにいるのだろう」
重苦しい声が鼓膜を震わせる。
義経と確かに耳にした。源義経のことか。大翔が生まれ変わりだと知っているのか。何者だ。
「逃げても無駄だ。おまえはもう一度死ぬのだ。おまえだけがやり直すなど許せぬ」
どうする。このままでは殺されかねない。
「兄の頼朝が迎えに来たぞ。出て来い」
頼朝!?
最初のコメントを投稿しよう!