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「ぼく、悪いことなんてしていない。頑張ったのになぜ死ななきゃいけなかったの」
どうした、何を言っている。ベッドと壁の隙間を覗き込むと大翔が震えていた。
「大翔。どうした。大丈夫か」
「おまえは味方か」
大翔の声音が突然変わった。何か憑依しているのか。それにしては霊的なものを感じない。そう思っていたら、大翔が気を失ってしまった。外にいると思わる頼朝の霊の気配も薄れている気がした。
いったい、何がどうなっている。
頭の中にはてなマークが飛び交っている。だが今はそんな場合じゃない。気を失った大翔を抱き上げてベッドに寝かす。ただ寝ているだけのようにも思える。もしかして、さっきの言葉は寝言か。それなら、それでいい。朝、大翔に訊いてみよう。
卓史はもう一度窓から様子を窺う。
頼朝はもういない。その代わりこちらを見上げる若丸と静の姿があった。
静は微笑みお辞儀をすると手招きをしてきた。若丸はその場に伏せて門柱から外に目を向けている。まるで、門番でもしているかのように。どうやら若丸はやられたわけではなかったらしい。
卓史は大翔をチラッと見遣ると階段を下りて外の静のもとへ足を向けた。夜中ともなるとかなり冷える。上着を着てくればよかった。
「すみません。お時間よろしいですか」
「ああ、けど手短に。寒くてたまらない」
「はい、そうですね」
静は大翔のことを訪ねてきた。気が気ではないのだろう。怯えていたが今は大丈夫だと伝えると安心したのかふぅーと吐息を漏らす。
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