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「頼朝は?」
「どうにか退けました。けど、また来るでしょう」
「それじゃ解決とはいかないな。どうにかしなくては」
「そうですね。大翔の義経の記憶を消せば、頼朝も来なくなるかもしれませんね」
「記憶を。静は消せるのか」
「いえ、わたくしには無理です。大翔自身が封じなくてはいけません」
卓史は黙考した。
大翔にそんなことできるだろうか。それにしても、姉夫婦はこんな騒ぎになっているのに寝ているのだろうか。まあ、そのほうがいいのだが。
頼朝はこの家には入ってくることはできない。ならば大翔にそう伝えておけば問題ないのかもしれない。けど、あまり意味がない気もする。静は大人になるにつれて前世の記憶は薄れていくだろうと話したが、そんな悠長なことでいいのだろうか。いずれ頼朝が神様よりも力を持つ可能性だってあるはずだ。
ううっ、寒い。
限界だ。
「ごめん、悪いけど寒くて。明日また話そう」
「はい、それではわたくしは帰ります。若丸が朝までここで警戒していますから頼朝はもう来ないでしょう。今日はですが」
若丸と目が合うと頷いた。
任せろということだろう。
気づくと静は闇へと溶け込んで見えなくなっていた。
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