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「見えるよ」
「じゃ、いままでのことは狸が原因なの」
「いや、それは違うな」
「じゃ、なんなのよ。はっきり言いなさいよ」
「あっ、お姉ちゃん」
おいおい、静まで来ちまった。どうやり過ごそうか。困ったな。どう説明したらいいのやら。
「ちょっと、何よ。お姉ちゃんって何。女の人の幽霊までいるの。あんた感じないっていっていなかったっけ」
「悪い霊は感じないってことだよ」
「幽霊がいるのは変わらないんでしょ。なんか私は嫌だな」
確かに、それが普通の反応か。自分は霊的な存在に慣れ過ぎてしまったのかもしれない。だからと言って、静は悪いことはしないはず。どちらかというと大翔を守ろうとしている。良い霊だ。そう伝えれば納得してくれるだろうか。同じ霊でも守護霊と言えば不思議と受け入れてくれる。人とはおかしな生き物だ。自分も人だけど。
まずい。姉が睨み付けている。あの顔になったら聞く耳を持たないだろう。睨み付けてくる姉と目が合わせられない。それでも話すしかないのか。自分自身、すべてを把握しているわけじゃないのに。
実は、大翔が源義経の生まれ変わりだ。なんて言いたいけどダメだ。卓史は嘆息を漏らして「あのさ、信じてくれないだろうけど」と口を開くとすぐに「とにかく、この家から幽霊を追い出して。それですべて終わり。いいわね」と静かな口調だがそれ以外は却下だという意志がひしひしと伝わってきた。
そんな姉の言葉など耳に入っていなかったのか大翔は玄関に走り「どうぞ」と招き入れようとしていた。
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