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少し歩いたせいか汗ばんできた。照りつける太陽のおかげで身体があったまっているせいもあるのかも。ちょっと厚着し過ぎたせいもあるのだろうけど。
上着を脱ぎかけたとき、胸ポケットに入れていたスマホの着信音がなった。
「卓史、まだつかないの」
いきなりの大声に耳からスマホを離す。
「姉ちゃん、鼓膜が破れちまうよ」
「あっ、ごめん」
おっ、今日は会話が成立しているぞ。良い感じだ。
卓史は頬を緩ませて「今、犬吠埼にいるよ」と話すと「そんなところで道草していないで早く仕事しに来なさいよ」と怒鳴られてしまった。仕事ってなんだよ。自分はまだ大学生だぞ。まさか拝み屋とか祓い屋とかと思っているのか。霊感が強いってだけでそういう仕事はしていない。勘違いが酷い姉だ。
まあいいか。ここからなら、十分もかからないで着くだろう。行くとするか。
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