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「まあいいわ。とにかく、上がって。卓史の好きなもの用意してあるから」
そう言われて居間に行くとそこには銚子の伊達巻寿司とカレーボールがテーブルにあった。気が利くじゃないか。姉にしては珍しい。
「珍しく気が利くね。姉ちゃん」
「珍しいって何よ。けど、その通りね。私じゃないのよ。旦那がね」
なるほど、そういうことか。
「あっ、おじちゃんだ」
大翔が満面の笑みで近づきドンと足に体当たりをしてきた。変だと言っていたがおかしな点はなさそうだけど。姉の早合点ってこともある。今のところ、この家に悪い霊の気配はない。大翔にも悪霊は憑いていない。それどころか神棚からいい気が流れ込んできている。なんの心配もなさそうだけど。いや、少し外が気にかかるだろうか。けど、この家に悪霊が近づく余地はないさそうだ。卓史は神棚に心の中で姉の家族を守ってくれていることに感謝した。
んっ、卓史は一瞬何か悲痛な念を感じた気がして大翔に目を向ける。微笑む大翔がそこにいるだけでおかしな点はない。気のせいか。
「大翔、ダメでしょ。ちゃんと挨拶しなさい」
「はい。おじちゃん、こんにちは」
「はい、こんにちは」
おじちゃんか。確かに叔父ではあるが、その言葉を耳にすると気になってしまう。二十歳なんだけどな。それでもおじちゃんなのか。
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