Happy Birthday

2/3
前へ
/3ページ
次へ
あ~、暑い。暑い。暑い。暑い。 夏は嫌いだ。 運動しなくても、ただじっとしているだけで汗は滲み出てくるし、湿気で機嫌は悪くなるし、喉は乾くし、陽射しは痛いし、やる気でないし。 せめて夜にでもなんなけりゃ、外に出て遊ぶなんて出来やしねぇ。 なのに、なんで俺は今、外にいるかな。 季節は残暑厳しい八月下旬。 ヒートなんたら、とか、なんとかかんとか、とか言う現象のせい(覚える気はない)で田舎より気温が上っている都会のど真ん中。の、公園の芝生の上。 何が悲しくて、男二人で寝転がっているんだか。 風は確かに気持ちいいが、いかんせん、生ぬるい。それにそんなものじゃ、灼熱の太陽光の威力は弱まらず、直接肌を焼く。 「なぁ、暑いんですけど」 「夏だからね」 んなこた分かってんだよ。 とは、言わず。 いや、言っても良かったんだけれど。暑くて暑くて。 これ以上体内の熱を上げたくはない。 仕方ないから、横にいる男をじっと睨んだ。 「?」 その行動の意味が理解できなかったようで、俺よりは数センチ上に位置するはずの頭を傾げている。 女じゃないんだから、全然可愛くない。・・・・が。 そこにトキメキらしきものを感じてしまうあたり、俺の脳は既に熱さで醗酵してんじゃないかと疑ってしまう。 はぁ、と自分に溜息を一つ。 しかし、それをどうも違う意味で取ったらしい彼は、ずいっとそのまま口づけができそうなほど顔を近づけてきた。その顔は不安を・・・いや、不満をありありと刻みこんでいる。 「・・・なに?」 「もっと笑ってよ」 無理です。暑いもの。 「今日は何の日だか、分かってないんだろ?」 意外な言葉に、俺は瞳を丸くする。口をパカッと開けて、情けない表情だろう。 はぁ、と、今度は彼が溜息を一つ。 「なんだよ・・」 そして、今度は俺が不満な表情を刻み込んだ。 「今日は、誕生日だろ」 「誰の?」 「・・・・俺の」 「え」 しばしの沈黙。 お互いに顔を見合わせる。いや、俺はそれしか出来ずに固まっているだけで、彼は半目で俺を睨む。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加