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「・・・・おめでとう」
何を言って良いのか分からず、誕生日なのだから祝わなければと、言葉にしてみた。すると、彼はガキみたいに嬉しそうに微笑み、満足そうに再び芝生に倒れこんだ。
先に謝罪をしたほうが良かったかも。なんて、思いもしたけれど、まぁ、喜んでもらえたみたいだから良いか、と納得しておく。
「・・・・なんで、言わなかったんだ。知らなかったぞ、俺」
「聞かなかったから、知ってるんだと思ってた」
そうか、そういうのは聞くべきなのか、と一人頷く。
「でもさ、お前だって聞かないけど、お前は俺の誕生日しってんの?」
「12月でしょ?」
即答。空を見ていた顔が、再び俺の方へ向く。
「ねぇ、プレゼント欲しいんだけど。」
「・・・何?」
あまりに楽しそうに微笑むので、訝しげに問い掛ける。
「俺の名前、言って。」
「・・・は?それがプレゼント?」
「うん」
そんなもので良いのかと、少し躊躇ったが、俺は言われたとおりに言ってやった。いつもよりは少しだけ、柔らかく。
「じゃあ、次は、誕生日知ってたからそのご褒美、頂戴」
「え」
「愛してる、って言って」
「ふざけんな、この野郎」
眉間におもいきり皺を寄せて、間髪入れずに否定してやった。
「えー。この機会にさ、素直になってさ、正式に付き合おうよ!」
「さっきのが俺の素直な気持ちだし、第一男同士で付き合うって意味が解らん」
「Hはするのに?」
「っっ!オマエッ公衆の面前でっっ!!」
あ~、ヤバイ。熱が上ってきた。
暑い、暑い、暑い。
ちょっと怒鳴っただけなのに、ほら、また汗が流れた。
だから、夏は嫌いなんだ。
でも。
まぁ、少しくらいは好きになってやっても良いかな。
なんて。
*END*
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