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【威光転生】
1946年、太平洋戦争終戦後ビキニ環礁で行われた核実験。
その名は『クロスロード作戦』
そこで某国の戦艦は最後の時を静かに待っていた。
七月一日に行われた最初の原爆投下、心を持たぬ戦艦は数多の光を見てきたが、それは今までに見た事のない強烈な光だった。
全てを滅ぼす破滅の光、他の艦が黒い海に沈んでいく中、一際大きな某国の戦艦はその光に耐えた。
そう、それは自国の民の心が折れぬのように、全てを失った敗戦国の民に一筋の希望にならんと……心を持たぬ戦艦は日の本の誇りを胸に聳え立った。
同二十五日。
無慈悲にも二回目の光が戦艦を襲う。
真っ赤に燃えた船体のまま、それでも戦艦は耐えた。
「ここまでか……と思っておるのか?」
心を持たぬ戦艦に語り掛ける人の姿をした何か、真っ赤に燃えながら四日、戦艦は沈む前の余興としてその者の話を聞いた。
「紋章を外され、大穴を開けられ、さぞかし辱められた事か。わしは貴様の国の人間として貴様を誇りに思う。そしてそんな貴様にもう一度戦えと言えば貴様はこの手を取るか?」
戦艦は人ならざる何かの言葉に、ないハズの心が騒いだ。自分の生まれた理由わけ、自分と共に戦った人間の心、もし……もしもという事が本当にあるのであれば……戦艦は望んだ。
「そうか、お主も修羅の道を行く事になるの」
その言葉と共に戦艦は自分の戦艦としての役目を終え、静かな海に自分の抜け殻を捨てた。
「女子の姿になったか、心を持たぬハズの付喪神がこれは珍しい」
「船は元々男が扱う物だからな。そういう意味ではアタシは乗り手の恋人のようなものだったんだろう」
藍色に紅葉柄の着物、腰には軍刀を差している姿。それを見て彼女を戦艦からこんな姿にした者はこう言った。
「おかえり、そしてようこそ」
「お前は一体何者だ?」
「英雄艦を煉獄より呼び出し化物にする。そうでもしないと止められない者がうようよしておってな。次の戦場は好きなだけ暴れればいい。君の燃料も、弾薬も飽きる程使えばよい。君に名前を与えよう。君の名はオトア」
元戦艦の少女は少し考えると苦虫をかみつぶしたような顔でこう言った。
「オトアか、アタシがひっくり返った姿を見て考えたな?」
「くくっ、海兵は学を良くしっておる」
「茶化すな、で? アタシは何をしたらいいんだ?」
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