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ある日、家主の二人がいつもと違う客人を連れてきた。
「お邪魔します」
「なんだ、リッカもシゲも猫くせえなとずっと思ってたら、本当に猫がいるのか」
生意気な口のきき方だが、それほど嫌な感じはしない。部屋の隅で話を聞いていると、二人と一緒に音楽をやることになったメンバーのようだった。
「リッカ、シゲ、野田さん、戸庭さん……たしかに微妙だな」
一通り、今後のバンドの方針についての会議を行ったあと、話題は四人の呼び方に移り変わった。
「全員名前でいんじゃないの。リッカ、シゲ、おれは野田慎二だからシン、戸庭さんは雅だからミヤ、かそのままミヤビでも」
「シゲとシンがかぶる」
リッカが反論した。
「言うほどでもねえだろ」
「戸庭さんも前のバンド名が『MIYABI』だろ。ミヤもミヤビも微妙じゃねえか」
「たしかにそれはそうかもな」
「おいシゲ、お前なんか別のあだ名ねえのか」
リッカが雑に尋ねる。
「ねーよ」
シゲがつれなく答えた。
「つっかえねーな。茂だからシゲって安直すぎだろ」
「なら名前そのまんまのリッカはなんなんだよ。他の呼び方されてんの聞いたことねえぞ」
二人の言い合いは日常茶飯事だ。
「いいよ、俺『トン』で」
野田が言った。
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