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カレーを作って待っていたが、その日の夜リッカは帰ってこなかった。
リッカが約束を守らなかったのは初めてで、おれは混乱し、せっかく作ったカレーも食べずに待ちくたびれて眠りに落ちた。
朝目を覚ましてもリッカはいなかった。空腹に耐えきれず温めもせずにカレーを食べたが、まったく味を感じず、腹が膨れたのかもよくわからなかった。
毎食たべて、鍋のカレーが空っぽになっても、リッカは帰ってこなかった。
不安と混乱で何も手につかず、おれはリッカを探しに外へ出た。
よく散歩していたころと風の向きがすっかり変わり、ひたすら冷たく身にこたえた。枯れ落ちた木の葉が、渦になって舞い上がる。
一緒に訪れたいろんな街角をひたすら歩いたが、リッカはどこにもいなかった。一度乗せてもらった電車で、もっと遠くまで探しにいってみたいとも思ったが、電車に乗るにはお金がかかるので、無駄遣いはよくないと諦めた。
家に帰りつく。玄関も部屋の中も冷たいままで、リッカの帰ってきた気配はなかった。
疲れた。疲れきった。
リッカはどこに行ったのだろう、どうして帰ってこないのだろう。
――雨上がりのにおいは、泥のにおい。
――いつか俺が見捨てた、夢のにおい。
頭の中を誰かの鼻歌が流れた。……誰かの、ではない。リッカの鼻歌だ。
今のはなんだ? なんなんだ?
何かを感じたおれは、手がかりを探すことにした。家の外には見つからなかったから、家の中だ。
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