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台所の戸棚。洗面台の下の棚。
床に転がった箱の中。押入れの中。
どこもかしこも大したものは置いていない。ようやく、押入れの上のほうに、物の入った紙袋が置いてあるのを発見した。
触ってみると、ずっしりしている。おまけに、奥を覗くと何袋もあった。
押入れの上の段にのぼり、落とさないよう気をつけながら、引っ張り出して畳の上に置いた。中身を出してみる。
平べったいプラスチックケースがいくつも入っている。テレビゲームのソフトによく似ているが、パッケージのデザインが違う。写真の上に文字が書いてあった。
「……たちあおい?」
そっとケースを開いてみる。中身もゲームとそっくりの丸い円盤だ。
テレビの電源をオンにした。ゲームの蓋を開け、 入っていたものを取り出して、今見つけた円盤を入れた。
かしゃ、うぃーん、という機械音が鳴って、ディスクが読み込まれているのがわかる。画面の中では意味のなさそうな丸や四角がぐるぐると回っている。
その画面が、すうっと暗くなった。
始まったのは、ゲームではなく歌だった。
歌声の主が誰なのか、最初はわからなかった。機械を通すと声が変わるし、何より喉をからして歌っているのなんて聞いたことがない。
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