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「なんすか、それ」
「ガキの頃のあだ名だよ。実家が養豚場だったの」
「なにそれ、おもろいっすね。あ、じゃあそういう系でいいじゃん。戸庭さんもないですか? 実家が魚屋とか八百屋とか」
「どういう芸名にすんだよ、それで。野田さんち肉屋じゃねえし」
シゲが真っ当なツッコミを入れた。しかし、もし実家が魚屋なら、あだ名はジャコになりはしないか、とおれは隅っこで危機感を覚えた。
「別に実家は普通だよ。サラリーマン家庭」
戸庭は答えた。
「父親が十人兄弟だけどさ」
「まじで! いつの世代っすか、それ。十人兄弟の何番目なんですか」
リッカがけらけら笑った。
「信じられないよな。八番目だよ」
「お、いいじゃん。なら『ハチ』でいきましょうよ」
「構わないよ、それで」
『ジャコ』は無事に守られた。
おれは安堵の息を吐き、大きなあくびを一つした。
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