Ⅲ ジャコ

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 ざ、と音がした。足元の小石が踏まれた音だ。  おれとシゲは顔を見合わせ、そろって振り返る。 「なに話してるかと思えば、人がいないのをいいことにずいぶん好き勝手言いやがる」 「……リッカ」  声に出したのはシゲだった。おれは、ただリッカを見つめていた。 「勝手に殺すな。オレは生きてるぞ」 「リッカ……本物?」 「わっ」  おれはリッカに抱きついた。  信じられなかったのだ。リッカのいない十四日間はおそろしいほどつらくて長かった。 「おい、離れろ。苦しいだろ。ってかなんでシゲがいるんだ」  シゲが嘆息した。 「こっちが聞きたいよ。行方不明になったって聞かされて、散々心配した瞬間に帰ってくるとか、どうなってるっていうんだ」 「色々あったんだよ」
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