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走る、さがす、駆ける、角を曲がる。幾度繰り返しても、知らない街並みが目の前に現れる。自転車や車の横を次々すり抜け、年のせいか予期せぬ動きについていけずに何度も轢かれかけて怒鳴られた。
高く上った太陽が帰り支度を始めても、まだ成果は得られなかった。疲れ果てて、ひょっとしたら勘すら鈍ったか、家には帰れるのかと不安が押し寄せてきた、そのとき。
――リッカが現れた。怪しい男たちに取り囲まれて。
リッカはおれを見て一瞬驚き、そして顔をしかめた。その瞬間、後ろを歩いていた男がリッカの足を小突いた。リッカがよろける。くそ野郎、毛がそそり立つ。
それでもリッカはもう一度おれのことを見た。逃げろ、帰れ、とその目は訴えていた。
……そんなこと、できるものか。様子を伺う。
いつの間にたどり着いたのか、ここは人通りの多い繁華街だ。ひっきりなしに人だけでなく自転車や車も行き交い、わいわいと騒がしくてせわしない。立ち止まる猫のおれを、見知らぬ人間たちが覗き込んだり指差したりしてくる。
リッカは三人の男に囲まれながらどこかへと向かっていた。さながら友人どうしのように見えるが、剣呑な空気と不自然な足取りがリッカのピンチを物語っている。
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