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リッカだ。痛い。熱い。……怖くはない。
リッカは無事だった。とんでもない音で撃ち抜かれ吹っ飛ばされたおれ。リッカの姿が小さく見える。目を見開いておれのほうまで走ってくる。
尋常じゃない騒ぎに人がわらわら集まってくるがおれにはリッカしか見えなかった。
熱い、痛い。
怪しい男たちはどこに消えた? リッカ、逃げろ。リッカ、逃げるんだ。
「ジャコ、ジャコ!!!!」
熱くて、痛くて……温かい。
リッカの胸が温かい。
「ジャコ、すぐだ! 病院までお願いだから我慢しろ!」
リッカがおれを抱いて走り出した。薄れゆく意識の中でおれはリッカに語りかけた。
リッカ、もういいんだ、あの時死んでたはずの命なんだ。リッカに救われた命なんだ。楽しかった。とても、楽しかった。
リッカが無事ならそれでいいんだ。だっておれは今……
さびしくないから。
「ジャコ、死ぬな……死ぬなよ! もうちょっと、もうちょっとだから」
温かいリッカの体。しかし感覚は徐々に奪われていき、一度だけ覚えている手術前の麻酔のように、心が肉体から離れどんどん薄くなっていった。
吹き消される命の火。なぜか直前に強く過ぎった思いがあった。
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