Ⅱ リッカ

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 紙切れは大学の成績表だった。自分に配られたものはろくに見もせず捨てた記憶があるが、ここにあるということは、保護者宛てにわざわざ別送でもされたのか。 「悪いか。ちゃんと進級したんだから」 「良いわけあるか!」  一喝される。 「大学に通う意味をなんだと思ってるんだ。だらだらさぼってモラトリアムを謳歌させるために、こっちは金を出してるわけじゃない」 「誰がだらけてるんだ。オレは、やりたいことをやりたいように、やってるだけだ」 「それがバンドだと言いたいのか? くだらない」 「はあ?」  その一言は聞き流せなかった。 「バンドがくだらないってなんだよ、それ。親父がやってることと何が違うんだ。同じ音楽だろ、変わらないじゃねえか」 「馬鹿か。何が同じだって? 仕事と遊びの、何が一緒なんだ」 「遊びじゃねえ」 「その程度のことがわかりもしないガキのくせして、よく授業をさぼれたもんだな」 「文学部なんだからそんな講義ねえよ」  後ろで自動ドアの開く音がした。なおも口を開こうとする父親のもとに、一人の男性が近寄った。
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