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「帰ろう」
声をかけるとシゲは、まるで黙祷でもするように目を閉じていた。ふつふつと怒りがわいてくる。シゲに対してでも親父に対してでもない。自分にだ。
雨が勢いを増してきた。
「リッカ、濡れてないで走れよ。風邪引くぞ」
「いーじゃん雨、気持ちいいし」
「ショックだったのはわかるけどさ、あんま、ヤケになりすぎるなって」
「そんなこというならシゲが走れば?」
「またそーいう……」
「って、あ」
「どうした?」
最初に目に留まったのは、道路脇に林立したやたらとカラフルな花だった。一メートル以上の高さまでにょきにょき伸びた太い茎に、二度見するほど存在感のある赤、白、ピンクの花弁がいくつもついている。しかし、視線はそこから降りて、花の根本へと移った。
「あそこ。灰色のかたまり。生きてる?」
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