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側溝の金属蓋が一カ所無くなり、ぽっかりと地面がくぼんでいる。子供、いや大人でもうっかり足を滑らせたら危険だ。
と、そうではなく、その溝に灰色のゴミのようなかたまりが落ちているのだ。ゴミのようだが、かすかに生命力を感じる。
「嘘。ゴミ袋かなんかだろ」
「いや絶対生き物だ」
オレはずんと近寄って行った。目をこらすと表面はビニールではなくぼさぼさとした毛並みで、やはり生物のそれだった。シゲが驚いたように呟く。
「マジか、猫だ」
「ほら言っただろ。ってかきたねえな、コイツ」
「……大丈夫? 生きてんの?」
背中の側から手を差し入れる。抵抗される感触は全くなかった。
「ってリッカ、拾ってどうするつもりだよ、子猫ならまだしも」
「重っ!」
そのまま持ち上げてみると、想像以上の命の重みを感じた。熱でもあるのか、身体がやたらと熱い。それとも小動物とはこんなものなんだろうか。
そのまま身体を検分する。ばさついた毛並みは梳かせば高級感を取り戻しそうな気品を感じたが、所々に血のかたまりがついていた。脚も不自然な方向にだらりと垂れさがっている。
「こいつ、やばい怪我してる。早く病院連れてかないと」
「はあ? 病院なんて連れてってどうすんだよ。まさか、飼うとか言い出す気じゃねえ……」
脈打つ鼓動は感じるが、もはや抵抗する気力もないほど弱っているようだった。先のことなど考えてはいない。ただ、その命のかたまりをかき抱く。
「って、おい、リッカ!」
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