Ⅱ リッカ

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「うるせーよ、シゲ。駅前にたしか動物病院あったよな……」  そのとき、再び花が目に入った。唐突な形と色の存在感。枯れた姿など想像もつかない生命力が、腕の中の消えかけた命と対比される。  ぱっ、とひらめくものがあった。 「おい、お前、すぐだからな。ちょっと我慢しろよ」  そっと背中をなでてから、走り出す。そしてぼやきながらも後をついてきたシゲに、走りながら言葉をかけた。 「あの花の名前を教えてくれたのもシゲだったよな」 「花? なんの話だ」  ここから駅までは十分足らず。間に合うか。いや、間に合え。 「おい、決めたからな」 「は?」 「野田さんも呼べよ。あのベース弾いてる」 「だからなんだよ、いきなり」  びしょ濡れの男二人が息を切らしながら走る。こっけいな姿だがどうでもよかった。今日から全てが始まる、という確信がオレにはあった。 「『タチアオイ』だ」 「なにがだよ。……ああ、花って」 「オレたちでバンドを組むんだよ。バンド名は、『タチアオイ』だ」
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