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一目見るなり医者は「厳しいかもしれませんね」と言った。
「そんなにひどいんですか」
シゲが尋ねる。
「骨折が何カ所もあるし、相当衰弱している。手術を乗り切る体力があるか……事故にでも合ったんですか」
「どうなんでしょう。拾ったので」
「拾った? たぶん、というか間違いなく飼われてた子だと思いますよ。いや、うちで診てた子ではないから、もちろん推測だけど」
「いいから、さっさと治せ」
オレは言った。医者は驚いたようにオレを見た。
「おい、リッカ」
「こいつ、今にも死にそうじゃねえか。お願いだから、さっさと助けてやってくれ」
金やこれからのことなど考えてはいなかった。ただ「助けてやる」、その気持ちだけだった。
「わかりました」
医者の腕はたしかだった。猫は、長い手術を乗り切り、麻酔からも目を覚まし、栄養を補給され、無事に退院した。
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