Ⅱ リッカ

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 一目見るなり医者は「厳しいかもしれませんね」と言った。 「そんなにひどいんですか」  シゲが尋ねる。 「骨折が何カ所もあるし、相当衰弱している。手術を乗り切る体力があるか……事故にでも合ったんですか」 「どうなんでしょう。拾ったので」 「拾った? たぶん、というか間違いなく飼われてた子だと思いますよ。いや、うちで診てた子ではないから、もちろん推測だけど」 「いいから、さっさと治せ」  オレは言った。医者は驚いたようにオレを見た。 「おい、リッカ」 「こいつ、今にも死にそうじゃねえか。お願いだから、さっさと助けてやってくれ」  金やこれからのことなど考えてはいなかった。ただ「助けてやる」、その気持ちだけだった。 「わかりました」  医者の腕はたしかだった。猫は、長い手術を乗り切り、麻酔からも目を覚まし、栄養を補給され、無事に退院した。
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