Ⅱ リッカ

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 良い知らせが舞い込んできたのは、それからほどなくしてのことだった。 「もしもし、リッカか。今大丈夫か?」 「はい、三角(みすみ)さん。どうしたんすか」  マネージャーからの電話はたいていオレのところへかかってくる。メールでなくわざわざ電話となると、急ぎの用件か良い話であることが多かったが、三角の声はいつも以上に浮足立っていた。 「よく聞いてくれ、いい知らせだ。『MIYABI』の戸庭、お前らのところにくるってよ」 「ようやくですか。遅いくらいだ」  口ではそう言ったが、内心は興奮でいっぱいだった。 「あのなあリッカ、その口のきき方で早々に逃げられるなよ。野田とも多賀とも違うタイプなんだから」  オレのことは平気で名前で呼ぶくせに、シゲのことは律儀に名字で呼ぶ。 「俺のところに連絡がきたから、もう顔合わせの予定も決めて伝えておいたぞ。明日の十六時、本社のスタジオだ。二人に伝えておいてくれ」 「ありがとうございます」  電話を切ったオレは飛び跳ね、ばたりと床に寝転がった。先にそうしていたジャコが、驚いてじろりとオレを見る。 「やったぜ、ジャコ。ギタリストだよ。タチアオイの新メンバーだ」  ジャコは小さく喉を鳴らすだけだ。 「おい! シゲ!」  寝ころんだまま隣の部屋に叫んだ。 「あー?」  気の抜けた返事に、間抜けな声出しやがって、と毒づく。 「MIYABIのギターがうちにくるぞ」 「なにを突拍子もない……て、え!?」 「目、覚めたか。声かけてたんだよ。タチアオイに入ってくれるって三角さんに連絡があったんだ」
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