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良い知らせが舞い込んできたのは、それからほどなくしてのことだった。
「もしもし、リッカか。今大丈夫か?」
「はい、三角(みすみ)さん。どうしたんすか」
マネージャーからの電話はたいていオレのところへかかってくる。メールでなくわざわざ電話となると、急ぎの用件か良い話であることが多かったが、三角の声はいつも以上に浮足立っていた。
「よく聞いてくれ、いい知らせだ。『MIYABI』の戸庭、お前らのところにくるってよ」
「ようやくですか。遅いくらいだ」
口ではそう言ったが、内心は興奮でいっぱいだった。
「あのなあリッカ、その口のきき方で早々に逃げられるなよ。野田とも多賀とも違うタイプなんだから」
オレのことは平気で名前で呼ぶくせに、シゲのことは律儀に名字で呼ぶ。
「俺のところに連絡がきたから、もう顔合わせの予定も決めて伝えておいたぞ。明日の十六時、本社のスタジオだ。二人に伝えておいてくれ」
「ありがとうございます」
電話を切ったオレは飛び跳ね、ばたりと床に寝転がった。先にそうしていたジャコが、驚いてじろりとオレを見る。
「やったぜ、ジャコ。ギタリストだよ。タチアオイの新メンバーだ」
ジャコは小さく喉を鳴らすだけだ。
「おい! シゲ!」
寝ころんだまま隣の部屋に叫んだ。
「あー?」
気の抜けた返事に、間抜けな声出しやがって、と毒づく。
「MIYABIのギターがうちにくるぞ」
「なにを突拍子もない……て、え!?」
「目、覚めたか。声かけてたんだよ。タチアオイに入ってくれるって三角さんに連絡があったんだ」
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