Ⅱ リッカ

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 一年、と宣言した目標は、さすがにその期間で達成するとはいかなかったものの、予想よりもはるかに道のりは順調で、タチアオイは着実にバンドとしての実績を積み重ねていた。 「今日の予定は?」 「十時から雑誌の撮影、午後はスタジオ、終わりしだいでタイアップのアニメの打ち合わせ」  答えながらシゲが嘆息する。 「三角さんから一週間分まとめてメールきてただろ」 「だってしょっちゅうリスケかかるだろうが。尋ねるほうがずっと早い」 「俺の頭はリッカのMDじゃねえよ」  朝食代わりの牛乳を一気飲みすると、ジャコが足元にすり寄ってくる。 「ああ悪い。これで最後だ」  逆さにして見せてやると、ぽたりと一滴落ちた。うらめしそうな顔をして「ニャア」と鳴いたジャコはそれを舐め取ると、この時間に日の当たる窓辺へとのそりのそりと向かっていった。 「あいつ、今いくつくらいなのかな」 「年? わかんないなー、猫の年は。でも、最近ずいぶんのんびりしてるし、もしかしたらけっこういってるんじゃないか?」 「そうかな」  美しかった毛並みは今も輝きを保ってはいるが、密度が少し薄くなってきた気がする。なにより、日がな寝ていることが増えた。日中はいないからその間何をしているのか知らないが、おそらく自分が家にいるときと大差ないだろう。 「おい、ジャコ。なんか今日、美味そうな飯買ってきてやるよ」  オレは呼びかけた。 「そんなものより、リッカが早く帰ってきたほうが、あいつ喜びそうなものだけどな」  シゲがぼそりと言う。オレたちは連れ立って家を出た。
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