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『立夏。私ねえ、猫を飼い始めたのよ』
『猫? ずいぶん急な話だな。拾ったのか?』
『いーえ。お友達のうちで飼われてた子なんだけど、そのお友達がもう呆けてきちゃってねえ。施設に入るっていうから、引き取ることになったの』
『ばあちゃん猫なんて飼ったことないだろ。迷惑な話だな』
『そんなことないのよ。ずいぶん昔だけど、私が子供の頃は家に猫がいたし、それにお友達の家にはよく遊びに行ってて私に懐いてたから。仲良くやってるのよ、人間より手がかからなくてありがたいわ』
『うるせえよ』
『ただね、名前が……新しく決めていいって言われてたんだけど、悩んじゃってねえ……』
『猫って、三毛か? それとも黒とか白とか、わかんねえけど、そんな感じでいいんじゃねえの』
『雑な子ねえ。おじゃこみたいな色してるわよ。灰色とシルバーでとっても綺麗な子』
『へー、ジャコ、ねえ。呼びやすいけどなんか美味そうだな』
『どっちかと言えば「弱そう」じゃないの?』
『ま、なんでもいいけど。まかり間違っても「リッカ」とかつけんなよ』
『自意識過剰。だったら、前のお友達が呼んでた名前で呼んであげるわよ。じゃ、そろそろね。立夏、あなた、ちゃんと食べてちゃんと寝なさいね』
『はいよ』
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