Ⅱ リッカ

31/70

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
『立夏。私ねえ、猫を飼い始めたのよ』 『猫? ずいぶん急な話だな。拾ったのか?』 『いーえ。お友達のうちで飼われてた子なんだけど、そのお友達がもう呆けてきちゃってねえ。施設に入るっていうから、引き取ることになったの』 『ばあちゃん猫なんて飼ったことないだろ。迷惑な話だな』 『そんなことないのよ。ずいぶん昔だけど、私が子供の頃は家に猫がいたし、それにお友達の家にはよく遊びに行ってて私に懐いてたから。仲良くやってるのよ、人間より手がかからなくてありがたいわ』 『うるせえよ』 『ただね、名前が……新しく決めていいって言われてたんだけど、悩んじゃってねえ……』 『猫って、三毛か? それとも黒とか白とか、わかんねえけど、そんな感じでいいんじゃねえの』 『雑な子ねえ。おじゃこみたいな色してるわよ。灰色とシルバーでとっても綺麗な子』 『へー、ジャコ、ねえ。呼びやすいけどなんか美味そうだな』 『どっちかと言えば「弱そう」じゃないの?』 『ま、なんでもいいけど。まかり間違っても「リッカ」とかつけんなよ』 『自意識過剰。だったら、前のお友達が呼んでた名前で呼んであげるわよ。じゃ、そろそろね。立夏、あなた、ちゃんと食べてちゃんと寝なさいね』 『はいよ』
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加