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バンッ!!
「キャー!!!!」
誰かの悲鳴、と、目の前を超えて吹っ飛んでいった、一匹の猫。
「ジャコ!!!!」
オレの、絶叫。
人通りの多い交差点だった。怒号と悲鳴が飛び交い、あたりが騒然となる。飛ばされた小さな身体が見えなくなる。
「邪魔だ、どけ!」
自分の危機など忘れた。駆け寄った灰色のかたまりからは、信じられない量の血が溢れだす。
「ジャコ、ジャコ!!!!」
手のひらでは抑えきれない。胸にかき抱いて、身体全体で出血を止めようとした。
ぐっしょりと胸元が濡れるばかりでらちがあかない。生温かいまま、小刻みに震えるオレのジャコ。
「ジャコ、すぐだ! 病院までお願いだから我慢しろ!」
呼びかけながら、気づいていた。必死で走ったけれど、わかっていた。ジャコはもう助からない。こんなに流れてしまったら、身体の中には何も残らない。
尊い心臓と引き換えに、オレは絶体絶命の危機を乗り越えた。
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