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「家がわかんなくても、どっから来たんだ?」
ただ首を横に振られ、まっすぐ目を見つめられる。オレはため息をついた。昔から動物と子供には弱いのだ。
ああ、ジャコを拾ったときと同じだ。だが、いくらなんでも人間を拾うわけにはいかなかった。
「そもそもこんな所で何してたんだよ」
「知らないよ……気が付いたら、ここにいたから」
やっぱり酒かヤクか? いやいや子供なんだって。
じゃあ、犯罪に巻き込まれたとか。見たところ、命に別状はなさそうだから、人質にはされたけれども都合が悪くなって薬で記憶を消されて放り出された。
一番ありそうな線ではあるが、だとしたら、誰かが助けてやらねば本当にかわいそうだ。
「家、ほんとにわかんねえんだな、名前も」
「うん」
「家族は。あ、ケータイは?」
「持ってないよ。家族は……いない」
オレはだんだん、なるようになれ、という気持ちになってきた。
「どこにも行くとこねえんだな」
こくりと頷かれ、起き上がった瞳と目が合った。
見つめあったら、その虹彩が灰色だと気づいてしまった。
「うちにくるか。たまたま一人分……いや、二人分、空いてるからさ」
少年はこくりと頷いた。
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