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いまどきの子供なのだったら「知らない人についていってはいけません」どころか「知らない人と話してはいけません」などと、教わるものだと思っていた。
こんなにあっさりついてきて、犯罪にでも巻き込まれたらどうする気だ。いや、もう巻き込まれた後なのか? というか、オレが気を付ければいい話か。歩きながら心が千々に乱れる。ともかく、オレはそいつを連れて家へと帰ったのだ。
少年を見つけたのは知らない場所だったが、少し歩くと見覚えのある景色に変わったのでほっとした。ひょっとしたら、同じところをぐるぐる走り続けていたのかもしれない。
そいつは、普通についてくればいいものを、まるで「二本足で歩くのは初めてです」と言わんばかりにおっかなびっくりヒョコヒョコと歩くので、とても時間がかかる。その間に冷静になれればよかったのだが、逆に夢が深まるようだった。
足取りだけはまぎれもなく子供のようで、本当にいるんだろうな? 幻みたいに消えてやしないな? と、オレは何度も振り返って確認してしまう。
「なに?」
「なんでもねえよ」
背の高さはオレより頭一つ分以上下で、Tシャツにジーンズといういたって特徴のない出で立ちだった。そのぶん、顔のつくりの美しさがより際立っていた。そのことも非現実感に拍車をかけていた。
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