Ⅱ リッカ

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 スーパーでは、米と味噌と、豆腐とねぎをカゴに入れた。 「お前、肉と魚とどっちが好きなんだ」 「どっちも」 「即答かよ」  知らない、わからない以外の答えが珍しくて、つい吹き出す。 「じゃあ、安いから肉な」  塩を振って焼けばなんとかなるだろう、と薄切り肉とコショウも買った。  結果を言うと、おぼろげな記憶を頼りに作った味噌汁は味に深みがなく、そのくせ少し塩辛かった。豚の塩コショウ焼きのほうはそれなりだった。 「おいおい、飲み干すなよ。高血圧になんぞ」  折り畳み式のローテーブルの向かい側に座ったジャコに注意する。 「コーケツアツ?」 「大人の病気だよ。ん、病気とは違うのか? よくわかんねえな」  ま、お前には縁がなさそうだけど、と付け加える。 「にしてもこの味噌汁、味濃いくせになんか足らねえんだよなあ」  何だろうな、と液体を舌の上で転がしていると、ジャコが唐突に言った。 「だし」 「おお、出汁か! なるほど。……って、なんでお前がそんなのわかるんだよ」 「『出汁をきちんと取らないと美味しくならないのよ』」 「は?」  誰かの真似のような口ぶりだった。聞き返してみたが、本人もそれ以上は思い出せないようで、首をかしげただけだった。 「……出汁ってどうやんのかな」  オレは部屋の隅に転がっていたノートパソコンを引き寄せた。作曲に使っていたものだが、表面にうっすらと埃の層を感じる。 「煮干し……昆布……めんどくせえなあ。あ、なんだ、素みたいなのあんじゃん。これ買ってきて入れればいいんだな」  行儀悪く寝ころんだ横で、ジャコも横すわりをして画面をのぞきこんでいる。 「ジャコ、お前やるか?」 「なにを?」 「料理。いつもオレにくっついてんのも暇だろ」  なんなら本とか買ってやるからさ、と言ったところであることが気になった。 「そういえばお前って字は読めるのか?」
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